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自然がつくるもの、人が仕立てるもの

自然がつくるもの、人が仕立てるもの

天然石を眺めていると、いつも時が経つのを忘れてしまいます。この結晶は、どのような時間の積層のなかで生まれてきたのか。思いを巡らせるほどに、その起源は人の短い時間感覚から遠ざかっていきます。

ただ、美しい結晶も、そのままでは宝石にはなりません。自然が生み出したものは、まだ「素材」にとどまっています。そこに人の手が加わることで、はじめて美しさは輪郭を持ちはじめます。


石取りで8割が決まる

とりわけ重要なのが、カットと研磨の工程。コレクションで用いる天然石のカット・研磨を引き受けてくれている職人は、ひとつの石を前にして30分、時には1時間以上も観察を続けるといいます。

石を回し、傾け、光にかざしながら、内部に潜む模様や色の流れを探る。どの位置を切り出せば、その石だけが持つ表情をよりよく引き出せるのかを見極めていきます。

石のなかには、あらかじめ決められた“正解のかたち”があるわけではありません。どの面を正面とするか、どの模様を活かすかによって、その見え方は大きく変わります。

この工程は「石取り」と呼ばれ、「ここで8割が決まる」と語る職人もいるほど、重要な作業です。


そのあわいにある、わずかな余白

私たちは、どのような表情を引き出したいのか、頭のなかにあるイメージを言葉にして職人に伝えます。しかし、その言葉をどのようにかたちへと変換するかは、職人に委ねられます。

すべてを私たちが規定するわけでもなく、すべてを職人に委ねるわけでもない。そのあわいにあるわずかな余白が、結果として、私たちの想像をほんの少し超える仕上がりを生み出します。

伝統技法がもたらす揺らぎ

江戸時代から続く伝統技法「手擦り」。回転する研磨盤に石を当て、指先の感覚だけを頼りに、圧力や角度を微細に調整しながらかたちを整えていきます。

機械的に均一な面をつくるのではなく、わずかな揺らぎを残しながら仕上げていく。その揺らぎが、石に奥行きと個性を与えます。

この道60年以上になる職人の手は、研磨という行為に適応するかのように、指先がやや厚みを帯び、研磨の過程で爪も削れていくため、常に短く整えられている。その手から生まれるかたちは、決して均質ではありません。むしろ、わずかな差異を含んだものです。

整いすぎたものは、どこかで解釈の余地を失います。少しの揺らぎがあることで、身につける人のなかに、受け取る余白が残る。私たちは、この「石が持つ表情」をできるだけそのまま届けたいと考えています。


石の表情を最大限に

「石が持つ表情」をそのまま届けるには、カットや研磨だけでなく、石をどのように支えるかという、ジュエリーとしての構造の問題にまで踏み込む必要があります。

石の表情を最大限に見せようとすると、従来の石留めではどうしても制約が生まれます。枠で囲えば輪郭が制限され、爪を増やせば、否が応でも地金の存在感が増していく。

この制約をどのように扱うか。
その問いに対する応答として生まれたのが、『Staple』と『Node』というふたつのコレクションです。

コレクション『Staple』は、石を囲うという前提から離れ、通して支える構造へ。

コレクション『Node』は、支点を極限まで減らしながら、成立する均衡を探る構造へ。

いずれも異なるアプローチではありますが、出発点は同じです。
石のなかにある表情を、できるだけそのまま引き出すこと。そして、その表情を損なうことなく支えること。

自然がつくるものと、人が仕立てるもの。その関係を、構造として引き受けようとした結果、これらのコレクションが生まれました。