石を留める。
ジュエリーにおいて、ごく当たり前の工程です。しかしその方法は、同時に石のかたちを制約するものでもあります。

例えば、金属で石を囲う「覆輪留め」。確実に石を保持できる合理的な構造ですが、一方で、石はその枠に合わせてかたちを整える必要があります。あらかじめ決められた輪郭に、石を収めていく。その関係性を、少し変えることはできないかと考えました。
石のかたちを、もっと自由に扱いたい。
『Staple』は、その思いから始まっています。
着想の起点となった建築用材

着想の起点となったのは、建築に用いられる「鎹(かすがい)」という道具。ふたつの部材を、最小限の構造でつなぎとめるためのものです。
囲うのではなく、通して支える。その発想を石留めに応用することで、石の輪郭をそのまま活かす構造が見えてきました。
「2つの穴を開ける」の実際

石の輪郭をそのまま活かす構造を実現するには、石の中央に2つの穴を開ける必要があります。言葉にするのは簡単ですが、実際の加工は非常に繊細かつ困難。2つの穴は、石のテーブル面に対して垂直であり、かつ互いに正確に平行でなければなりません。わずかなズレでも、パーツはまっすぐ通らず、ジュエリーとして成立しなくなってしまいます。
一般的な穴あけ機では、加工中の穴口が泥状に広がった研磨材で覆われ、ほとんど見えません。手の感覚だけを頼りに作業を進めざるを得ず、精密な穴あけは極めて難しい。そのため、工房では、Staple専用の穴あけ機を導入し、職人が作業にあたっています。


先端にダイヤモンド粒子をコーティングしたドリルを用いて、慎重に石を削っていく。しかし、この作業も一筋縄にはいきません。
Stapleで用いる石はランダムな形状。通常、穴あけの際には石を固定しますが、その形状のために、器具による固定が難しく、職人が手で支えながら加工を行う必要があります。

数ミリ削っては、鎹(かすがい)パーツを差し込み、角度や位置を確認する。その工程を何度も繰り返しながら、2本の穴の精度を揃えていきます。

加工が進むにつれて、ドリルの先端も摩耗していきます。精度を保つためには、その都度ビットを交換しなければなりません。

想像以上の時間と手間をかけて、ようやくひとつの石に2つの平行な穴が通るようになります。
石のかたちを解放する構造

こうして完成した石は、金属の枠に収められることなく、鎹(かすがい)パーツを通すことで支えられます。その違いによって、見え方は大きく変わります。
輪郭はそのままに、内部の表情も遮られない。「手擦り」によって生まれた揺らぎも、そのまま活かされる。構造を変えることで、石の在り方そのものが変わっていきます。
前提となる制約に石が合わせるのではなく、石に合わせてジュエリーの構造自体を設計する。
『Staple』は、そのために生まれたコレクションです。
-

Node
六角形の天然石を、二つの爪のみで留めた
コレクション『Node』。
力が集まり、かたちが成立する“結節点”に着目。
必要最小限の構造で、天然石を支持しました。
構造を削ぎ落とすことで立ち現れる
静かに均衡する、かたちの美しさ。








































