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[ Note ] 春になると思い出す言葉

[ Note ] 春になると思い出す言葉|cobaco

先日のアトリエオープンデーでお客様から教わったパン屋へ向かう道すがら、あたりに目をやるとちらほら桜の花が咲きはじめていました。さらに歩をすすめると、今度は沈丁花の香りが鼻をかすめます。近ごろ寒い日が続いていたせいかまだまだ冬気分だったけれど、知らないあいだに春が足元までやってきていたんですね。この季節になるといつも星野道夫がアラスカのフェアバンクス滞在中に綴ったエッセイの一節を思い出します。(なぜだか夏にではなく、春に)

「頬を撫でてゆく風の感触も甘く、季節が変わってゆこうとしていることがわかります。(中略)人間の気持ちとは可笑しいものですね。どうしようもなく些細な日常に左右されている一方で、風の感触や初夏の気配で、こんなにも豊かになれるのですから。」(星野道夫『旅をする木』文春文庫、1999)

近ごろ「些細な日常」に振り回されて、あたらしい季節の気配にすら気づけずにいました。スマホの画面をどれだけ繰っても沈丁花の香りはしてこないし、あの場所に咲く桜の花にも出会えない。SNSから流れてくる春で済まさず、わたしに直に触れてくる春を、今年はしっかりかみ締めようと思います。

[ Note ] 小さくも大きい1mmの世界

[ Note ] 小さくも大きい1mmの世界

ジュエリーのような世界にいると「1mm」という単位は決して小さくありません。たった1mm違うだけで、繊細に見えたり、品が感じられたり、逆に粗野な印象に転んだり。大きく印象が変わってくるから不思議です。ちなみに「Gold Ring_plain(narrow)」をはじめ、cobacoの多くのリングがおよそ1mm幅。リング幅2mmとなると、わたしたちのブランドではもうマリッジリングのカテゴリになってきます。

さきほどもすこし触れましたが、今春に控えたパッケージリニューアルに向けていま準備を進めています。デザインをお願いしているデザイナーの方とやりとりをしていたら、パッケージのある部分について「12mm」がよいか、それとも「13mm」の方がよいかという話があがりました。ここでも「1mmの違い」です。一方はすっきりとした佇まいに感じられ、もう一方はバランスがよく安定感があり、やや力強さのようなものすら感じる印象。最終的に「12mm」に落ち着きました。

感覚の襞(ひだ)へと分け入るように小さな違いに目を凝らしてつぶさに観察していく。すると想像よりもはるかに豊かな世界が見えてくる。この世界に身を置かなければ、その楽しさに気づくこともなかったかもしれません。(まぁ、投げ出したくなるときもありますが…)

[ Note ] 平穏無事を祈る心

Blog|cobaco

いつもお世話になっているloji flowerさんでお迎えした正月飾りを今年もアトリエの玄関口に飾りました。しめ飾りひとつ加わるだけで心が洗われるというか、清らかな気持ちになるから不思議です。

五穀豊穣の神である年神様(としがみさま)をお迎えするために稲わらを編んでつくったしめ縄、不浄を清める意味をもつ水引、長寿を願う縁起物である若松やウラジロ、ヒカゲカズラ…よくよくひも解いてみると、ひとつのお飾りのなかに日本人が大切にしてきた文化がたくさんつまっていることが垣間見れて興味深いです。

実質2週間ほどしか飾られないにも関わらず、年始の風習としてこれまで残ってきたわけですから「平穏無事に新しい年を迎えたい」と願う気持ちはその昔から変わらないのでしょうね。年始早々大変なことが続いている今年は特に、平穏無事であることの大切さを痛感させられます。

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この度の能登半島地震により犠牲となられた方々に深く哀悼の意を表するとともに、被災されたみなさま、また、ご家族・関係者のみなさまに心よりお見舞い申し上げます。被災地域のみなさまの安全と、一日も早い復興をお祈り申し上げます。

[ Note ] 文質彬彬たろうとする姿勢

cobaco

文質彬彬(ぶんしつひんぴん)

装いや立ち居振る舞い、言葉使いといった外見的な美しさと自身の内面の実質との調和がとれているさま。

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オンラインストアリニューアルに際し、あたらしいブランドコンセプトコピーをお願いしたコピーライターの方からのご提案で出会ったのが、この言葉でした。私たちが目指しているものをすくい取ってくださった思いがして、すっかりお気に入りの言葉になっています。

批評家の吉本隆明は「現在の自分」と「なりたい自分」のあいだで交わされる問答こそが最も価値のあることなんだ、と説きました。理想の自分に近づくのにいま私はなにをすればよいのだろう?と自分自身に何度も問いかけることこそが豊かさを生むのだと。装いを変えてみたり、言動を変えてみたり、いろいろと試行錯誤するなかで、外見と中身がすこしずつ釣り合っていくわけです。その問答の往来のなかで、人はうつくしい佇まいを得るのではないでしょうか。文質彬彬である」ことが重要なのではなく、文質彬彬「たろうとする」こと、つまり、そこに至るプロセスこそが大切なのだと思うのです。

あたらしいブランドコンセプトである「うつくしい日々の予感。」の「予感」からは「文質彬彬たろうとする」姿勢を感じ取っていただけるのではないかと思います。わたしたちのジュエリーが、身につける人にとって「なりたい自分」に近づくためのひとつのきっかけになることを願いながら、これからもジュエリーづくりに取り組んでいこうと思います。