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[ Note ] 予感の音

目的地に向かい、通りをまっすぐ歩いていると、
軒先に飾られた紙垂と提灯が目に入りました。

町のあちこちには、法被姿の人たち。
少し先には、まさに組み立てている最中の神輿の姿も。
どうやら、もうすぐ祭りがあるようです。

その先の角を曲がったあたりで、
音頭をとる太鼓のリズムが聴こえてきました。

本番に向けて、練習をしているのでしょう。
じりじりとした陽射しとは対照的に、
通りには初夏らしい風が吹き抜けていて、
繰り返される太鼓の音が、不思議と心地よく響いてきます。

急ぐ足を止め、しばらく耳を澄ませました。

そういえば、昔からなぜか、練習の音に惹かれるところがあります。

放課後、遠くの教室から聴こえてくる、吹奏楽部の金管楽器の混ざりあった音。
夜の公園で、何度も同じフレーズを確かめるサックスの音色。
舞台袖の向こうから漏れてくる、声出しや調律の気配。

それらは、すべてが完成された本番の音とは、少し違っています。

まだ整いきってはいない、かたちを成す前の音。
「いまここ」だけではなく、「これから」を含んだ音。
その未完成さのなかに、どこか心をひらかれるものがあります。

美しい日々の予感。

その言葉が、ふと頭をよぎりました。
私たちが掲げている言葉です。

美しさは、完成された姿のなかだけにあるのではなく、まだ名前を持たない気配や、かたちになる前のかたちのなかにも、すでに宿っている。

そして、その先に何かが待っていると思えること。
そのささやかな兆しに、私たちは思いのほか支えられているのかもしれません。

遠くなっていく太鼓の音を背にして、目的地へと足を早めました。

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