Xmas Limited Collection『選べるダイヤモンド』で展開しているラウンドブリリアントカットダイヤモンドをあしらったコンビジュエリー。極細のプラチナ爪で石留めすることで、側面から見てもダイヤモンドの輝きを楽しむことができるデザインになっています。実現の裏には、不可能を可能にした”特別なプラチナ”の存在がありました。
"特別なプラチナ"が実現したデザイン
一見ダイヤが浮かんでみえるようなデザインを目指しました。ダイヤの輝きをパーツが邪魔することがないよう、ダイヤを留めている4本の爪の部分には、シルバー色のプラチナを使っています。
ただ、プラチナは、ゴールドなど他の貴金属に比べ柔らかい金属。通常プラチナを使い、今回のようなダイヤモンドの留め方をする場合、写真のピアスのように、少なくとも爪を6本にしたり、台座を設ける必要があります。
どちらにしてもパーツの分量が増えてくるため、見た目の印象もすっきりしません。それを解決してくれたのが、世界にも類を見ない硬さを誇る特別なプラチナ『タイムレスプラチナム950®(以下、TLP950®)』でした。
今回、リングとしての耐久性を維持しつつ、許す限り爪を含む台座のパーツを細くつくることができたのは『TLP950®』のおかげ。”特別なプラチナ”の存在があったからこそ実現したデザインと言えます。
硬いプラチナができるまで
『TLP950®』は提携工房が特許を取得しているオリジナルのプラチナ素材。圧倒的な硬さを誇るプラチナづくりに挑むことになったきっかけはお客様の声でした。
「ずっと身につけてきた結婚指輪にキズが入ってしまって」。その声を聞くたびに残念な気持ちになったという工房の先代社長。一念発起して、素材開発に取りかかります。
当初は開発できる目処などまったくありませんでした。当時工房で働いていた「地金博士」という異名をもつ職人の手を借り、「こうすれば理論上は硬いプラチナができるはず」という開発の糸口をようやくつかみます。ただ、あくまで理論上の話。実際に完成するまでには2年以上の歳月と数えきれない試作の繰り返しを要しします。こうして、圧倒的な硬さを誇るプラチナがようやく完成することに。
「硬度」と「強度」
ジュエリーの耐久性を測る尺度には「硬度」と「強度」があります。
まずは、「硬度」。金属の硬さを表す値として「Hv」(ビッカース硬度)と呼ばれる単位があります。この数値が高ければ高いほど、キズや凹みがつきにくく、ながく美しい姿を保つことができます。『TLP950®』がどれほど硬い金属なのか、他の素材と比べてみましょう。
よくあるプラチナ(Pt950)のおよそ3.7倍の硬度があります。他の金属と比べてみて、圧倒的な硬さであることがわかります。
よくあるプラチナ(Pt950)と『TLP950®』をコインで引っかいてみました。よくあるプラチナの板(左)にはくっきりと引っかいた跡が残っているのに対し、『TLP950』の板(右)には引っかいた跡がうっすらと見える程度。ほとんどキズがついていません。
次に「強度」。強度があればあるほど、歪みや変形を起こしにくくなります。
プラチナ製リングを上下から圧力をかけて強度を測る実験を行った結果がこちらです。よくあるプラチナが押しつぶされてグニャグニャになるような圧力でも、『TLP950®』製のリングはもとのかたちをきれいに保っています。
工夫を求めてくる素材
その尋常じゃない硬さゆえ、ジュエリーに仕立てていくときにも、他の素材と同じようにはいきません。ダイヤを留める爪を倒していく作業ひとつとっても、硬いというだけで難易度が跳ねあがります。他にないレベルの硬さを自在に操ることのできる職人の存在が欠かせません。
「とにかく驚くほど硬いので(笑)、従来の方法ではうまく行かないことも多々あります。この硬さに対応していくには、道具の使い方はもちろん、道具自体の改良も必要になってきます。自前で専用の道具を作ったりは、しょっちゅうやっていますね。」
「扱いが難しい素材にどうやって対応していくか。試行錯誤を繰り返していくうちに、いつの間にか職人としての技術の幅が広がっている。技術の革新はそんなところから起こっていくんです。『TLP950®』はチャレンジし甲斐のある素材ですね。」
特別な素材とそれを使いこなす職人の技が可能にした、一粒ダイヤモンドジュエリー。ありそうでなかったデザインは、このようにして生み出されました。