
「クラヴァットの結びが完璧でなければ、装いは完成しない」
18〜19世紀初頭、イギリス摂政時代に生きたボー・ブランメル(Beau Brummell)。“ダンディの元祖”と呼ばれ、当時の男性服の価値観を一変させた人物です。
宝石や刺繍に彩られた華美な装いが主流だった時代に、彼は無地のダークスーツ、清潔な白いシャツ、そして完璧に結ばれたクラヴァット(ネクタイの前身)という、徹底した引き算の美学を提示しました。
クラヴァットを結び直すために何時間も鏡の前に立ち、気に入らなければすべてを着替え直したという逸話が残されています。そこにあったのは虚栄心ではなく、「ひとつの違和感は全体を崩す」という思想だったのだと思います。
ネクタイの結びひとつにまで思想を通すこと。
それは、自分という存在をどのように整えるかという問いでもあります。
ある小さな選択が、ほんの少し自分を変える。
変わった自分が、また別のものを選び取る。
その連なりの中で「らしさ」が形づくられていく。
ブランドもまた、同じだと思うのです。
ひとつのデザイン、ひとつの素材、ひとつの言葉。その積み重ねが「らしさ」を形づくると同時に、ブランドそのものを更新していく。
今年、cobacoは17年目を迎えました。
振り返ると、当初思い描いていた姿とはずいぶん違う場所に立っています。けれど、その変化は決して断絶ではなく、無数の小さな選択の延長線上にありました。
もしブランメルの言葉を借りるなら、細部を整えることは、未来を整えることでもあるのかもしれません。
20周年を迎えるころ、cobacoはどのような姿になっているのでしょう。いまの私たちには想像もできない場所に立っているかもしれません。
ブランドは固定されたロゴではなく、呼吸をしながら育っていく存在。
その変化を、これからも静かに楽しんでいきたいと思います。