近頃、「人の品性」について思いを巡らすことが増えました。自身はもちろんcobacoというブランドにおいても「品よく」ありたいと思いながら日々運営しています。
「品性」と言っても、「高貴さ」や「品格溢れる」といった大層なものではなく、どちらかといえば「気持ちのよい立ち居振る舞い」といったニュアンスでしょうか。人と人との関わりにおいて「相手を慮ること」。そのことがコミュニケーションの前提にあると感じられる立ち居振舞いに品性を感じます。
言うは易し、行うは難し。忙しくなると、ついつい心の矢印が自分の方にばかり向いてしまい、誰かとコミュニケーションをとる場面においても、相手(の心境など)に目が行き届かず、雑な振る舞いをしてしまいがちなのですが。
先日、「気持ちのよい立ち居振る舞い」のお手本のような清々しいエッセイに出会いました。彬子女王による留学記『赤と青のガウン』です。4月に文庫化されたのを機に、この頃あらためて話題になっているようです。
留学なされていたオックスフォード大学でのさまざまなエピソードが描かれているのですが、その中心にはいつも人(相手)がいます。いずれのエピソードもたしかに自身にまつわるエピソードなのですが、友人や担当教授、寮の人たち、家族など、目線の先にいつも身近な「相手」がいて、読み手に彼らのキャラクターをしっかりと感じてもらいたいという思いが端々からにじみ出ているのです。まさに「相手を慮ること」が前提にあると感じられるエピソードばかり。忙しくて視野が狭まっていると感じる度に読み返すことになりそうです。