旅行先や出張先で意外と困るのが、外したジュエリーの仕舞いどころ。私たち自身、ジュエリーを手軽に仕舞っておける使い勝手のよいものがほしいとずっと思ってきました。ジュエリーケースづくりの老舗メーカー協力のもと、オリジナルのジュエリーポーチづくりがはじまります。
手軽さと上質感を両立する生地
かたちはシンプルに、上質な生地で。押さえておきたいポイントを満たしてくれる理想の生地を見つけることからはじめました。
まず第一に、ジュエリーを傷めない、なめらかで柔らかいもの。もちろん、チープな質感では台無しです。ジュエリーを収めておきたくなる、持ち運びたくなる上質さは必要です。そして、なにより大切なポイントは適度にしっかりとした厚みとハリ。ここは外せませんでした。理由は後ほど。
真っ先に思い浮かんだのはレザー(革)。けれど、やや仰々しいというか、手軽に持ち運べる感じがしません。手軽で上質。なかなか難しいお題です。
ヒントをくれたのは、以前オリジナルで製作したジュエリー収納キット。ジュエリーをお届けする際のパッケージにはめると、そのままジュエリーケースになるアイテムなのですが、こちらに採用したのが上質なスエード調生地でした。
なめらかな質感で、生地自体もとても柔らかい。それでいて、上質さも感じられる。クリアしたい条件をほぼ満たしています。おまけに、イメージしていたチャコールグレーのカラーバリエーションも。
ただ、ポーチとして仕立てるには生地に張りが足りず、ふにゃふにゃとしているため、片手でもってジュエリーをポーチに入れる動作がやりづらい。あきらめきれず、ジュエリーケースメーカーの担当者の方に相談してみることに。
「厚みが足りないなら、貼り合わせてみましょうか。」なるほど、たしかに2枚分の厚みがあれば、よりハリのあるものに仕上がるはず。二つ返事で生地の貼り合わせをお願いしました。
仕上がった生地がこちら。なめらかな質感、柔らかさは保ちつつ、生地の厚みが増したことによって、上質感も増し、何より求めていたハリが生まれました。
暮らしの道具としてのポーチ
今回のポーチでいちばん大事にしたかったポイントは「手軽さ」。
たとえば、ポーチのなかに仕切りを設けると、ネックレスとリングをわけて入れることができたりして一見便利に感じるけれど、使っていくうちに面倒に感じてきたり、取り出したいジュエリーにうまく手が届かなかったりして、意外に手軽さが損なわれがちに。
毎日のように使えて、ながく愛用できる。暮らしの道具としてのポーチがつくりたい。初心に忠実に、仕切りなどもつくらず、機能的にも、デザイン的にも、できるだけシンプルなものを心がけました。
シンプルなものほど奥が深いもの。見た目と持ちやすさ、使いやすさのバランスがちょうどよいところを探るのに、かなり時間をかけました。ケースメーカーの方が呆れてしまうほど何度も試作を重ねることになります。
サイズ感はどうするか。ホックタイプにするのか、ファスナータイプにするのか。フタのかたちをどうするか。フタを閉じたときの長さをどうするか。さまざまな可能性を試しながら、ちょうどいいラインを見つけていきます。
あまり深さがありすぎると、ポーチの中が見えづらいし、女性の手だとジュエリーを取り出しづらくなってしまいます。逆に浅すぎると、ジュエリーを取り出そうとした際に、ジュエリーが落としてしまったりする心配が。5mm単位でサンプルを作成し、ちょうどいい按配の深さを探っていきました。
シンプルさのなかに詰めこんだこと
なぜ、生地の厚みにこだわったのか。実はジュエリーポーチづくりでどうしても外せないポイントがありました。それは、ポーチを開いたときにパカッと開くこと。
取り出すジュエリーがしっかり見えて、間違えずに取り上げる。それが使いやすさに直結すると考えました。生地に生まれたハリのおかげで、フタをあけたときに、パカッと開き、ポーチのなかを見通せるように仕上がりました。
たとえば、ポーチの側面。持ち運びの際にジュエリーが落ちることがないよう、フタを閉じた際にすき間ができないように調整しています。フタがめくれるのを抑えるために、フタの角は丸く落とすことに。
ジュエリーが傷つかないように、共地でホック裏も隠しました。
スマートフォンを機種変更したときに、幅が数ミリ大きくなっただけで、すごく持ちづらくなった経験があります。ポーチのサイズ感にはかなり気を使いました。女性が片手でなんなく持てるサイズに設定しています。
シンプルながら、使い勝手のよいポーチに仕上がりました。